インテリア / Interior
吉祥寺からっぽの劇場祭 プログラム取り下げのお知らせ
この度、2020年7月24日より実施予定だった『シアター・マテリアル / 黒い箱を預ける[山]』を2020年7月27日付で吉祥寺からっぽの劇場祭のプログラムから取り下げることになりました。
以下、判断に至った経緯についてご説明します。
2020年7月1日、当時の都内の感染状況を鑑みて、京都在住である私が当日現場の交換作業には同行しないこと、また今後もオンライン上でやりとりを行いながらクリエーションを進めていくということを劇場祭側と両者合意の上で取り決めました。
2020年7月24日、その日に行われた箱馬の交換作業中に箱馬の養生に不備があったこと、当日の天候も含め山中の環境が想定していた以上に過酷であったことがわかり、現場の判断で設置する予定の箱馬を急遽持ち帰ったという報告を当日作業を担当した劇場祭関係者から受けました。またその報告の中で、交換対象である山の素材は劇場に持ち帰ってきたこと、また養生ができた状態の箱馬を一つだけ山中に残してきたということについても報告を受けました。
連絡の十分に取り合えない環境下で起こった不測の事態とはいえ、現場で行われた判断が「箱馬と山を同じ分量入れ替えて、劇場祭の開催期間中それぞれ保管する」という作品の趣旨からかけ離れたものであること、また作品の根幹に大きく関わるこれらの意思決定が、演出である私への事前の報告や相談もなく現場の関係者のみの判断によって行われたことについて、あらためて劇場祭側に説明を求めました。その後キュレーターである綾門さんも含めて劇場祭側と話し合いを重ね、プランの修正等も含めて今後の可能性について模索してきましたが、まず今回起こった問題と誠実に向き合わないことには、形を変えてクリエーションを継続することも、新たに別の作品を制作・発表することもできないとして、既定のプランの実施中止およびプログラムの取り下げを打診しました。
今回の取り下げにあたって、現場で起こりうる様々なリスクを想定した上でこれまでの準備期間も含め総合的にディレクションできていなかったこと、また現場での作業を委任した関係者をはじめ劇場祭側とのプランの共有が不十分であったことを、まずは演出である私に帰する問題として真摯に受け止めたいと考えています。一方で、今回現場で行われた意思決定は、作家・劇場間のコミュニケーションの問題だけに帰結するものではないと考えています。今後につきましても、ただの一プログラムの中止に伴う事務的な後処理にとどまることなく、このからっぽの劇場祭を内側から批判的に問い直す機会となるよう引き続き劇場祭側とは協議を続けていきます。
最後になりますが、今回のプログラムを楽しみにしていただいた皆様に深くお詫び申し上げます。 何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。
福井裕孝
2020年7月28日