インテリア / Interior
カナブン / 2020年7月31日
小野彩加
埼玉県
イェー
私は、8月の上旬にE9に伺う予定だったので、7月に預かった箱馬を返却し、私の家の空間を経験した箱馬と京都で再会するということに重きを置き、応募をさせていただきました。
7/12
イェーが自宅に届くのを楽しみにしていました。黒の段ボールに包まれて届き、そのビジュアル・素材・重さを少し堪能したくなり、開封せずにリビングの横に居てもらうことにしました。
7/13
朝起きて、イェーの存在を確認し、「おはよう」と。この日は、朝から予定があったため、帰宅後20時頃に開封。プロジェクトについて記載された紙、夏を過ごす蚊取り線香と共に、イェーが姿を現しました。E9から来た「もの」だけど、来た時から「生きもの」のような感じもして、「ペットを買ったことはないけど、ペットがお家に来て、昂揚しながらゲージを開け、ペットとご対面」するかのように、私もイェーと出会いました。
2020年7月14日 / お部屋にて
7/14
リビングの窓際に居てもらい、心が躍り、家紹介するために、イェーを抱えて各お部屋へ。イェーを置くのに落ち着いたところは私のお部屋。
7/15
完璧に部屋の一部として存在するイェーと同居人としてのイェー。帰宅して部屋に入り「イェーただいま」と発したのを機に「イェー」と命名。
7/16
最近、窓際でメイクをするため、椅子として「イェー」を使用。ちょうど良い高さと座り心地のため、リモートワークの際にも使用させていただきました。座っているときは「もの」と感じ、離れたら「ありがとう」と伝える。
7/17
「生きもの」というより「アイボ」みたいな、心を交わすことはできるけど、「もの」としての存在を強く認識した。
7/18
少し日に当ててみようと出窓に置く。イェー越しに猫を見た。猫を感じたことあるのかな。
7/19
丸穴にお花を飾りたいな。ふつふつと思う。自分の部屋の出窓と日光が導いてくれたイメージ。
7/20
階段に設置。4段目と5段目が同じ高さに。この2段だけ階段を階段では無くし身体的不快感を味わいました。
7/21
以前に比べてイェーを意識することなく過ごしたのは、馴染んできたからなのか、イェーの「もの」化が進んできたのか。見つめる時はありました。
7/22
黒の木は落ち着きを得る。ヒーリング効果としても良し。
7/23
今日はお休み。イェーの中にスピーカーを入れて音楽を聴く。中央の穴に耳をあて寝転び、身体には重低音が響き、脳内で踊る。
7/24
イェーがいることには慣れつつも、劇場以外の空間で箱馬を見ることがなく、なぜうちにあるんだろう。と不思議に思う。劇場に行った際は必ずイェーを意識すると思うし、今は、劇場を意識・体感している。
7/25
イェーは、私の部屋の空間に居続けている。
7/26
初期の頃と比べて、イェーは「もの」としての意識化が進んでいます。
7/27
イェーの場所を引越し、パジャマ置きになりました。預かっている身なのに、物理的なアプローチしてしまってます。
枕 / 2020年7月28日
7/28
もうすぐお返しするので、やりたいことその1・枕にしてみました。高さがあるので、首が耐えられず、長時間頭をのせることができませんでしたが、布団の上で1日過ごしてもらいました。イェーが布団から離れた際に、イェーの空白を感じました。今更ながら、他者の「もの」の前で、いろんな姿をさらけ出してるのが恥ずかしい。
7/29
劇場にある箱馬とは全く異なる存在、居方。心なしか、イェーの雰囲気が柔らかくなったと思います。劇場は、緊張を生み出す空間でもあるかもしれなくて、「もの」のピリつきもあり得るのではと思います。
7/30
あと1日で、私の部屋に空白が生まれる。私は劇場で過ごすことはよくあるけど、私の部屋に劇場の「もの」が来ることはまずないことなので、私の部屋や布団や窓際など、経験の積み重ねを感じます。
7/31
ブーンと音で目が覚める。カーテンに黒くて緑に光ったカナブンが止まっていて、イェーを使ってカナブンを外に逃しました。これが、最後の共同作業でした。
小物 / 2020年8月1日
8/1
3週間ですが、イェーが部屋に居た時間は、予想していたよりも膨大な時間でした。集荷を待つ際は玄関に置き、その後ろ姿が切なくて写真を撮る。また会えると思っているので寂しいという気持ちはないけど、イェーを思い出し、そこからE9を思い出す。ありがとうございました。
集荷待ち / 2020年8月1日
〈プロフィール〉
小野彩加(おの・あやか)
舞台作家、ダンサー。1991年12月30日生まれ。2016年から2019年まで多田淳之介率いる〈キラリふじみ・リージョナルカンパニーACT-F〉に参加。ダンサー、パフォーマーとして、白神ももこ『絵のない絵本』、黒沢美香『6:30 AM』、浅井信好『はてしない物語』、ドドド・モリ『火星婦』、かえるP『スーパースーハー』、三野新『アフターフィルム』、ピチェ・クランチェン『MI(X)G』、ルサンチカ『鞄(作:安部工房)』などの作品に参加している。